私がこの手でキングサーモンを釣り上げるまで、何回アラスカに通っただろうか。
二十歳前後の頃、バックパックに釣具とキャンプ用品を詰め、アラスカとカナダを旅して回った。
はじめはキングサーモンに特別な関心はなかった。とにかくアラスカで、何でもいいからサケマスの類を釣れればそれでよかった。ガイドを雇うお金も意思もなかった私は、カヌーで川くだりをしたり、山の中の湖を目指してハイキングしながら、野宿をしてニジマスやグレイリングを釣っていた。
何回目かのアラスカで、フライでサーモンを釣る体験をしてから、私のサーモンフィッシングに対する考え方が変わった。フライはルアーと異なり軽量なため、バックパッキングをしながらの釣り旅にはもってこいなのだ。その旅行の最後に、アンカレッジの書店でフライに関する書籍を買い集め、帰国した。そして次のアラスカ行きまで、アラスカで用いられている主なフライを一通り巻いた。
再びアラスカに来たのは2003年の5月。ちょうどホーマースピットラグーンにキングサーモンの第一陣が近づいていた頃だった。砂浜にテントを張り、早速出漁した。新鮮な群れがいるときは、何を投げたとしても釣れる。案の定、数キャスト目でメスのキングが釣れた。
その釣り場で知り合ったのが、シルバーフィン・ガイドサービスのギャリーだった。彼は私に、地元の餌釣りのやり方を教えてくれた。地元で長い間培われてきた釣り方で、とてもシンプルかつ効率的だった。もちろんフライより釣果は格段によかった。
彼に連れられて、私はアンカー川、ニニルチック川、ディープクリークへキングサーモンを釣りに行った。ラインを持つ指先にダイレクトに伝わるキングサーモンの強烈なアタリ、そして強い合わせと同時に走り出す魚の動き、全てが最高の体験だった。
もっと早くにこの釣り方を知っていたらよかったのに、と思った。たしかに、自分でリサーチをし、ガイドに頼らずに異国の地で見知らぬ魚を釣るのはとても楽しい。
しかし同時に、ガイドに出会わなければ知ることのできないことも沢山ある。地元の人しかしらないとっておきの釣りの楽しみ方やポイントなどの情報は、ガイドと過ごす数時間の間に手にすることのできるかけがえのない情報だ。ガイドを雇うことで、この地域とのつながりがぐっと増し、旅の楽しみを深めてくれるのだ。
なぜ釣り人はキングサーモン釣りにはまるのだろう。それは、大物を釣り友に自慢するためや、大物釣りの興奮を味わうためだけではない。ガイドとの人間関係を通じて、アラスカ内外の釣り人のネットワークに
つながること、それがこの釣りの大きな魅力なのではないだろうか。
⇒ キーナイ半島南部のキングサーモンのシーズンは5月下旬~6月中旬。シルバーフィン・ガイドサービスでも随時予約お問い合わせを受け付けています。
参考サイト